7-8 第8話 それでも残った疑問


私は、この問題から少しずつ離れていった。

だが、疑問が消えたわけではなかった。

むしろ、最後まで残った疑問は一つに絞られていった。

約1,455万円は、結局、誰が受け取ったのか。

K社長の話が、すべて正しかったとは今でも思っていない。

出来事から十五年以上が経っていた。

記憶違いもあっただろう。

話の中には、つじつまの合わないところもあった。

預金総額は約1,455万円なのに、なぜ約1,000万円を振り込むという説明だったのか。

残りの約455万円はどうする話だったのか。

「白紙の領収証」と呼んでいたものは、本当に領収証だったのか。

行員Aは、本当に6月8日に退職したのか。

2019年の支店訪問で、本当に実印が執務室へ持ち込まれたのか。

支店長は本当に、

「Kさん、金、下ろしたんじゃないの?」

と言ったのか。

どれも、私がその場で確認したことではない。

K社長から聞いた話である。

だから、それらを銀行側の事実として書くことはできない。

一方で、資料によって確認できたこともあった。

2006年6月8日。

普通預金1,354万6,120円。

定期預金100万円。

合計1,454万6,120円。

その全額が、通帳の上では払い戻されている。

残高はゼロになっていた。

そしてK社長は、

「自分は一円も受け取っていない」

と言い続けた。

もしK社長の記憶違いだったのなら、それでもよかった。

本人が現金を受け取った記録があれば、それを見れば終わる。

別口座へ送ったのであれば、送金先を確認すればよい。

第三者が正規に受け取ったのであれば、その記録があればよい。

ところが、その一番単純な確認が最後までできなかった。

私は、銀行員が横領したと決めつけたくなかった。

一方で、

「回答済みである」

という言葉だけで、

「K社長の勘違いだった」

と片づけることもできなかった。

私が知りたかったのは、犯人ではない。

事実だった。

2006年6月8日。

あの日、口座から払い戻された約1,455万円は、どこへ行ったのか。

その疑問は、結局残った。


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