7-6 第6話 確認できなかった回答書


銀行は、回答書を送ったと言う。

K社長は、見ていないと言う。

その間にいたのが、弁護士Dだった。

私はK社長に、弁護士Dへ連絡し、銀行から届いた回答書が残っていないか確認してもらうよう頼んだ。

だが、話はなかなか進まなかった。

「先生には、前に頼んだんですよ」

「何て言っていましたか」

「探してみるって言ってたかな」

「回答書はあったんですか」

「そこが、よく分からないんですよ」

K社長の説明は、どうしても曖昧だった。

当時のK社長はすでに足が悪く、体調にも波があった。

一方、弁護士Dもかなり高齢だった。

何年も前の案件だった。

書面が事務所に残っているのか。

K社長へすでに渡していたのか。

どこかに紛れてしまったのか。

正確なことは分からなかった。

私は正式な代理人ではない。

K社長の知人として資料の整理を手伝っているだけである。

弁護士には守秘義務もある。

私が直接聞けば何でも教えてもらえるという話でもなかった。

結局、その回答書を私は見ることができなかった。

もう一つ、手がかりになりそうな資料があった。

2019年にK社長が支店を訪れた際、銀行から渡されたという書類である。

支店内で見せられたものとは違っていた、とK社長が話していたコピーだった。

K社長は、その書類を原宿警察署へ持っていき、相談していた。

問題の銀行支店は静岡県内にある。

そのため原宿警察署からは、

「管轄外なので、静岡県側の警察へ相談してください」

という趣旨の説明を受けたという。

K社長の話では、熱海警察署へ行くよう案内された。

そして、原宿警察署へ渡した関係書類は、K社長の手元には戻ってこなかった。

被害届が正式に受理されたのかどうか。

そこは、今となっては私にもはっきりしない。

ただ、K社長が警察へ書類を持ち込み、その後、その資料を自分では持っていなかったことは覚えている。

もし手元に残っていれば、私自身が後から確認できたかもしれない。

K社長が原宿警察署を頼ったのには、理由があった。

以前、地元で起きたトラブルの解決に協力し、原宿警察署から表彰を受けたことがあったという。

その表彰状は、私も実際に見たことがある。

だからK社長には、

「以前は自分が警察に協力したのに、自分が困ったときには助けてもらえない」

という思いがあったようだった。

「表彰状なんか、破いてしまおうかと思った」

そんなことも言っていた。

怒り半分、寂しさ半分だったのかもしれない。

銀行の回答書は、弁護士のところにあるかもしれない。

支店から渡された資料は、警察にあるかもしれない。

払戻しの記録は、銀行にあるかもしれない。

だが、私たちの手元にはない。

残っているのは、残高がゼロになった通帳と、K社長の記憶だった。

私は、この問題をどこまで追うべきなのか、少しずつ迷い始めていた。


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