7-7 第7話 打つ手がなくなっていった


銀行の回答書を確認することはできなかった。

警察へ渡した資料も、手元にはなかった。

払戻伝票も見ることができない。

それでも私は、しばらくの間、この問題をもう少し追えるのではないかと思っていた。

だが、現実には次第に難しくなっていった。

一番大きかったのは、K社長自身がほとんど動けなくなっていたことだった。

銀行へ行く。

弁護士に会う。

静岡県側の警察へ相談に行く。

どれも、本人の協力なしには進めにくい。

私は正式な代理人でもなければ、家族でもない。

知人として資料を整理し、問い合わせを手伝うことはできても、本人に代わってすべてを進めることはできなかった。

全国銀行協会まで相談すれば、さすがに何かは動く。

私は、どこかでそう思っていた。

だが、結果は変わらなかった。

では、次に何をすればいいのか。

弁護士に改めて動いてもらうのか。

K社長に静岡県側の警察へ行ってもらうのか。

訴訟まで考えるのか。

そこまで行けば、もはや私が知人として少し手伝うという範囲を超えていた。

しかも、その頃にはK社長自身がほとんど自由に動けなくなっていた。

正直に言えば、私自身も少し腰が引けていた。

もう一つ、大きなきっかけがあった。

私の勤務先が、新宿から神田へ移ったのである。

それまでは、K社長の事務所がある新宿が、私の日常の動線の中にあった。

仕事の帰りに寄る。

少し顔を出す。

一緒にビールを飲みながら話を聞く。

そういうことが簡単にできた。

ところが、勤務先が神田へ移ると、新宿は「わざわざ行く場所」になった。

ほんの少しの距離の違いである。

だが、人間の付き合いというのは、そんな小さな変化で意外なほど変わる。

「今日は寄ってみよう」

と思う機会が減った。

K社長からも、以前ほど頻繁に連絡が来なくなった。

私からも、銀行の件について積極的に動くことが減った。

忘れたわけではなかった。

ただ、

この問題は、もう自分の力では解決できないのかもしれない。

そう思うようになっていた。

最後にいつ会ったのか。

最後にいつ電話で話したのか。

今となっては、正確には思い出せない。

連絡を取らない時間だけが、少しずつ長くなっていった。


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