7-4 第4話 銀行への手紙


私は、K社長から聞いた話を一枚の文書にまとめた。

銀行に確認したかったことは、三つだった。

一つ目。

行員Aは、本当に2006年6月8日に退職したのか。

二つ目。

同日付で全額払い戻された預金について、払戻伝票や送金記録は残っているのか。

三つ目。

K社長が、その約1,455万円を受け取ったことを示す記録はあるのか。

私が求めたのは、それだけだった。

約1,455万円を返してほしい、と要求したわけではない。

行員Aが横領した、と決めつけたわけでもない。

本人は、

「受け取っていない」

と言っている。

一方、通帳上では預金は全額払い戻されている。

ならば、その金が誰に、どのような方法で支払われたのか。

そこを確認したかった。

もちろん、問題の手続は2006年のことである。

すでに十五年以上が経っていた。

保存期間が過ぎ、当時の伝票が残っていない可能性もあった。

それなら、それでもよかった。

「記録が残っていない」

というのも、一つの回答である。

この銀行について、もう一つ書いておかなければならない。

私がK社長から本格的に相談を受けた頃、この銀行は、すでに大規模な不正融資問題で社会の厳しい批判を浴びていた。

もちろん、その問題とK社長の預金の問題は別である。

過去に不祥事を起こした銀行だからといって、今回も不正があったと決めつけることはできない。

ただ、

「銀行員に金を取られた」

と聞いたとき、その銀行をめぐる過去の問題が頭に浮かばなかったと言えば嘘になる。

だからこそ、逆に記録で確認したかった。

ところが、銀行から返ってきた回答は、私が期待していたものとは違っていた。

その趣旨は、おおむね、

この件については、すでに本人側へ回答している。

銀行として、これ以上払い戻しに応じる理由はない。

というものだった。

私は少し戸惑った。

こちらは、まず事実関係を確認したかったのである。

それに対する答えが、

「すでに回答済みです」

だった。

では、その回答を見ればよい。

私はK社長に尋ねた。

「銀行から、以前に正式な回答書をもらっているんですか」

「いや、もらってないと思いますよ」

「弁護士の先生には届いていませんか」

「分からないですね」

K社長は以前、この件を弁護士に相談していた。

銀行の説明によれば、その弁護士宛てに回答書を送っているという。

だが、K社長の手元にはなかった。

私も見ることができなかった。

銀行が回答書を送ったという話自体を、私は疑っていたわけではない。

正式な代理人である弁護士へ回答していたのかもしれない。

問題は、その中身を確認できないことだった。

ならば、その回答書をもう一度送ってもらえばいい。

私はそう考えた。


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